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2001年6月
田中眞紀子の「外交破壊!」
週刊文春/6月14日号
眞紀子外相が心を許す数少ない政治家、自民党の平沢勝栄代議士が応援団ゆえに叱咤する。氏は警察庁時代、大使館勤務も経験している。
―若葉マーク外交では日本を滅ぼす―
●盟友あえて言う
私は先の総裁選で、「自民党の明日を創る会」のメンバーである石原伸晃さんや渡辺喜美さんと一緒に、眞紀子さんを総裁候補にかつごうとしました。
眞紀子さんなら、自民党という伏魔殿を変えられるのではないか。
彼女が号令をかけ、あとは周りにまかせてくれれば、たとえば派閥の順送り人事で粗製濫造大臣ばかり出てくる現状も変えることができると思ったのです。
眞紀子さんは、本当に頭のいい勘の鋭い人です。 いく ら周りが反対しようと、国民の支持をバックに外務省改革ができる、希有な政治家であるのは間違いない。
国民は眞紀子さんなら従来の追従外交ではなく、韓国や中国に対しても、国益をきちんと踏まえた外交をしてくれるのではないかと期待しているのです。
この期待を裏切ったら、眞紀子さんに対する国民の支持は失せます。だからこそ、いまあえて苦言を呈したいのです。
いま、眞紀子外交は四面楚歌で、いろいろ批判されています。
問題があることは否定できませんが、だからといって、これまでの日本外交が正しく国益を踏まえてきたか、といえば「ノー」です。
機密費問題はうやむや、李 登輝前総統へのビザ発給問題などでは、中国の内政干渉を許してきた。
同盟国であるアメリカに対しても、言うべきことを主張して信頼を勝ち得てきたのではなく、ただオウム返しに従ってきただけ。
誰も河野洋平さんまでの外務省がしっかりした外交をやっていたとは、残念ながらとてもいえないでしょう。
しかしこれまでのところ、眞紀子外相も迷走ぎみです。
就任以来、ご自分の発言を訂正する場面が目立ちましたが、外相は二十四時間すべての言葉が大きな重みをもつという覚悟が足りないのでばないか。会食の場の雑談だったという言い訳はききません。
また、米のアーミテージ国務副長官との会談キャンセルについて「はずせない私用があった」「就任直後で、パニック状態だった」とおっしゃった。後から、外務省がパニック状態という意味と説明していたが、どちらにしてもあってはならないことです。
たとえば警視総監は、任期中は三百六十五日、二十四時間、東京から一歩もでてはいけないし、酔っ払ってもいけないんです。
ましてや外相は日本国全体の危機管理にかかわるのですから、すべての瞬間が公務なのです。
就任早々の五月一日、金正男の不法入国という危機管理上の大問題が起きた。
私は三日の夜に、複数の政府関係者に「このまま帰すべきではない」と電話をしたが、四日の朝にあっさり帰してしまった。
北朝鮮の拉致問題を鑑みても実に無念なことですよ。しかし、これは眞紀子外相一人だけの問題ではない。
小泉政権そのものが抱える「危機管理能力の欠如」という大問題の現われでしょう。
さらに、眞紀子外相が米国のNMD(全米ミサイル防衛計画)を批判したという報道がもし事実ならば、個人の意見は自由だが、それを外相として主張することは別問題でしょう、といわざるをえない。
就任直後に「もう、一個人の田中眞紀子議員ではないんですよ」と申し上げたのですが・・・・・・・・。
誤解しないでいただきたいのは、米の主張がすべて正しいわけではなく、米のいいなりになる外交も正しいとはいえないということ。
私自身は防衛庁審議官もつとめましたが、TMD(戦域ミサイル防衛)の共同開発計画に関して、こんな巨額の費用負担を受け入れてはたして効果はあるのだろうかという思いはある。
ただし、外交は大臣の個人的見解でくるくると変わるものではなく、継続性が大事です。
そうした意見をお持ちだとしても、米との折衝の場できちんと主張するならともかく、内閣の同意も得ずに他国 との懇談で表明したとすればやり方が間違っています。
一方で、中国に対しては迎合という印象を受けます。本来なら、田中角栄総理の時代からの中国との太いパイプがあるからこそ可能な外交があるはず。たとえば眞紀子さんが「李登輝さんの件や靖国の問題で、内政干渉発言は日中友好の増進のためにも控えてほしい」といえば値千金ですよ。
中国べったりの槙田アジア太洋州局長には望むべくもありませんが、眞紀子さんの発言には中国側も耳を傾けてくれる可能性があります。しかし実際には「新しい歴史教科書をつくる会」についても、就任会見で「いまだに歴史をねじ曲げようとする人々がいる」と発言された。しかも、実物を読んだうえでの発言ではありません
「反米・親中」という批判が事実と異なることを実証するためにも、ぜひ中国に対しても言うべきことは言っていただきたい。
●このままでは裸の王様になる。
私が秘書官として仕えた後藤田正晴官房長官は、役人を上手に使うので有名だった。そして、その後藤田さんをさらに上手に使ったのが、中曽根総理大臣でした。中曽根さんは自分が後藤田さんに嫌われているのを承知のうえで、女房役の官房長官に据えたのです。後年、「後藤田さんなら役人を抑えてくれるし、東京の大災害時に危機管理ができる」という理由をうかがいました。
小泉首相と眞紀子外相には著しい共通点がある。
国民的人気は高いが、近くの人間からあまり支持されない点です。
眞紀子さんも、自分と食い違う意見にも、まず広く耳を傾け、それから判断すべきです。
提灯持ちばかり周りにおいていては、裸の王様になってしまう。
その意味で、外務省の幹部数人を大臣室出入り禁止にしたのは、いかがかと思います。
問題があれば、徹底的に 議論を戦わせればいいと思うのです。
機密費問題が、松尾元室長ひとりで行える犯罪でないのは明白ですが、外務省は必死で隠そうとしています。
だいたい、機密費をプライベートに使っているなんて常識でしたよ。
「機密費問題での再処分は不可能」などという役人の理屈にだまされず、新しい事実が判明すれぱ新たな処分ができるのですから、きっちり調査していただきたい。
外相就任から約一カ月、やや焦りすぎ、肩に力が入っていると感じます。
車でいえば、若葉マークの初心者であるとはいえます。
しかし本来、大臣は就任したその日から重大な責務を負うのです。いま党の中にも、外務省の中にも、虎視眈々と失脚を図ろうとする勢力がいます。
眞紀子さんが外務大臣としてあり続けるためには、側近の意見に耳を傾け、個人的見解はさておき、日本の国益を踏まえ、しっかりとした自主独立の外交を確立することです。
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